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これでいい野田クラクションベベー

”日々の暮らしにメリット”をそんな気持ちで執筆しています。

壁No.072 1ラウンドKOな壁

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1ラウンドKOな壁

 僕は、目の前に足が飛んできた瞬間に、意識を失った。
 僕は、タイ出身のチェンと申します。小さい頃から、ムエタイの世界一になる!!という目標を掲げてがんばってきました。その理由は、10人兄弟の面倒を見るためです。みんなは、僕が勝つと喜ぶし、負けると悲しんでくれます。そんな、可愛い兄弟のためならどんな事でも頑張れました。
 ある日、1番下の妹が病にかかってしまい、お医者さんに「余命は、3ヶ月」と宣告されました。唯一助ける方法は、アメリカで手術を受けるという選択肢のみ。ただ、お金が1000万円もかかります。普通のムエタイでは、3ヶ月で1000万円を稼ぐのは無理です。僕はその時、ある噂を思い出しました。"違法 ムエタイ 勝てば1000万、負ければ地獄"という看板だ。いかにも胡散臭いが、妹を助けるためには方法がない。思い切って電話をしてみると、1週間後に試合となった。
 そして、試合当日。連れて行かれた、地下の格闘技場は異様な匂いと空気感に包まれていた。それは、血生臭く、決していい匂いとは思えなかった。その理由に気づいたのは、試合が始まろうとしていた時だった。四方八方囲まれた鉄の柵に針のようなモノが見えた。しかし、気づいた時には遅く、対戦相手は手に斧を持っていた。まさに殺戮ショーのようだった。僕は、リングを走り回った。だが、足を滑らせて相手に顔を蹴られ、意識を失った。
 起きると、そこは病院だった。
周りには、兄弟達の姿があり睨んでいた。どうしたのか?と聞いても誰も反応が無かった。兄弟の数を数えると9人しかいなかった。そう、兄は妹の臓器を使い生き延びたのだ。それが、"負ければ地獄"の理由だった。

  




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