愛のある夫婦の壁
『私は妻の髪を切り続ける』
戦時中私は、兵隊さんたちの髪の毛を切る仕事をしていた。毎日忙しく、妻にかまっている暇は無かった。それでも、私を讃えてくれる妻に感謝していた。ある日、私の住む街に毒が撒かれた。妻は、一命は取り留めたもののひどい障害を負った。脳が麻痺し、私の存在を忘れてしまったのだ。私は酷く後悔した。悔やんでも悔やんでも悔やみきれなかった。その1ヶ月後戦争は終わった。
毒を撒いた国よりも自分を恨んだ。そこで、自分にできることを探した。それは、妻を美しくしてあげることだった。髪の毛を切ることで、コミュニケーションをし続けた。その結果、妻が心を開いてくれるようになった。少しづつだが、私に興味を持ち始めたのだった。
だが、その3ヶ月後に妻は死んだ。私は深く悲しんだ。はさみも1度は置いた。けれど、それじゃ妻が悲しむ。そう思ったから、私は再びはさみを持った。妻が喜ぶかはわからない、それでも私は髪を切り続けようと思う。