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これでいい野田クラクションベベー

”日々の暮らしにメリット”をそんな気持ちで執筆しています。

壁No.104 僕はここで絵を描き続ける風な壁

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僕はここで絵を描き続ける風な壁

僕は今日も絵を描き続けている。
元々絵描きではなかった。普通のサラリーマンだった。社会という規範に従って生きていた。それなりに給料も貰っていたし、奥さんと子供もいて楽しい日々を過ごしていた。この先もずっとそんな生活が続くと思っていた。
ある家族旅行でのことである。朝早く目覚めてしまった僕は、一足先に散歩がてらに街を歩いていた。朝の街は、涼しく過ごしやすい気温で居心地が良かった。ある路地の裏に入った時だ。1人のおじさんが壁に絵を描いていた。大きなネコの絵。決して上手くはなかったが印象的だった。そのおじさんは僕の方を見てボソッと言ってきた。
"違和感を感じるだろ?それが個性ってもんだ。君にはあるかい?個性は"と言ってきた。
確かに僕に個性はあるのだろうか。そんな立派な人間なのだろうか。色んなことを考えた。こんな真っ直ぐに生きてて楽しいのか。本当にやりたいことはなんだ。そんなこんなで、朝は終わった。
滞在中は毎朝その壁のとこに行った。おじさんは、微笑んで僕を見る。ただ、前回のようには言葉は発せず、笑うだけ。気味が悪いが、印象的。個性があった。
帰国の朝におじさんに挨拶に行こうとした。今日は姿が無かった。壁を見るとメッセージが描かれていた。
"この絵を完成することは出来たのだろうか?誰にも届かなくてもいい。私の存在がこの絵を通じて多くの人に届きますように。"
それ以来僕は絵を描いている。誰かに認められたくてやっていない。天国で見守ってくれている妻と娘にも見ているかな?僕は、ここで絵を描き続ける。


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